十一面サンタの仏像ばなし

大好きな仏像の魅力を、独断と偏見で書き綴ります。

[見仏文庫](番外編)「邪鬼の性」/水尾比呂志・著【淡交新社】

(今は古書店でしか手に入らない書籍を番外編とします) amazonで購入一般的に、お寺を参拝する人たちは、とりあえずはご本尊の前に行き、線香焚いて賽銭投げて、太い紅白の紐で鐘を突き、手を合わせてお祈りして、満足して帰路につく、という方がほとんどだ…

札所と仏像

充電期間と称して、1年以上も更新をサボってしまいました。 高野山や四国では開創1200年記念で盛り上がりましたし、いろいろ思うところもあったので、追々更新していきたいと思います。●札所とは…? ということで、今回は札所と仏像について。 四国八十八箇…

マイアングル・其の2(鎌倉仏像館/他)

前回の続き。さて、アンニュイな雰囲気で衆生を魅了する水月観音ですが、その表情はそれとはうらはらに、誘惑的な恍惚さとも、排他的な冷ややかさともとれる妖艶さに溢れています。この面持ちが、ぼくのホットスポットにハマってしまったようで、水月観音の…

マイアングル・其の1(東慶寺・水月観音)

多くの仏像には、ぼくだけのベストアングルがあります。彫刻作品が、絵画や写真などと最も違う点は、当然ながら立体か平面かという点です。言い方を変えると絵画や写真は、元々ある立体素材を、任意の角度から切り取り、その姿を平面に表現したものです。 つ…

仏像名シーンあれこれ

前回、いくつかの名シーンを抜粋して仏像を紹介しましたが、あといくつかを、経典や書物からご紹介。原始経典「稀有未曾有経」から、 有名なお釈迦さん誕生シーン。 生まれてすぐ、7歩進んで天と地を指し『天上天下唯我独尊』と叫ぶ。 (東大寺・誕生釈迦仏…

仏像ジオラマ

■ 突然ですがガンダムのお話古い話で恐縮ですが、世界的に有名な『機動戦士ガンダム』というアニメがありました。 その中で当時、一世を風靡した最終回の名シーンがあります。傷だらけになったガンダムが頭上の敵に向かって、ビームライフルの最後の一撃を放…

平成のシンデレラ(東大寺四月堂2)

前回のつづき。さて、晴れてミュージアムの御本尊となった四月堂の千手観音。 馴染みの風景が見られなくなったのはさみしいけれど、ミュージアムならではの夢のコラボが実現しています。かつて法華堂の不空羂索観音の脇侍でお馴染みの、日光月光両菩薩が、本…

歴史的主役交代劇(東大寺四月堂1)

一般にはあまり知られていませんが、東大寺には二月堂、三月堂のほかに、四月堂というお堂があります。 お水取りが行われる有名な二月堂の他に ぼくの大好きな不空羂索観音がおわします法華堂、これが通称三月堂、 そして、そのふたつ影に隠れてひっそりと佇…

不滅の王者 不空羂索観音(東大寺法華堂)

須弥壇の修理のため閉鎖されていた東大寺法華堂が2年半ぶりに公開され、ついにご本尊・不空羂索観音を拝観できる日がやってきました。ぼくが見仏趣味を始めた時には、すでに法華堂の修理は始まっていて、雑誌や写真記事が、ぼくの情報のすべてでした。 昨年4…

受難の仏像(和歌山県立博物館)

高野山のお膝元である和歌山県立博物館が、珍しい企画展を開催しているときいて行ってきました。和歌山県では平成20年ごろから、仏像の盗難が相次いでいました。 2年後犯人は逮捕されましたが、ほとんどの仏像は売りさばかれた後でした。 その後も仏像の窃…

召喚される神仏(RPG的 密教入門2)

前回の続き。密教の呪文(真言)で召喚される神仏は、主なものだけでも約100種以上に及びます。 それぞれが独特な姿かたちをしていて、自慢の武器や乗り物、また特殊能力を持っています。 例えば★攻撃系 不動明王 炎の龍に変わり敵を貫く、無敵のクリカラ剣…

RPG的 密教入門

日記の更新もせずぼーっとしてる間に、年が明けて早や2月。 自分を諌めて、雪の高野山に初見参、初見仏してきました。高野山といえば密教、真言宗。 比叡山と並び、日本の密教の原点にして総本山です。 仏像を楽しむのに、密教ほど最適な宗派はありません。…

光の芸術家(浄土寺2)

前回の続き。平家の南都焼き討ちで灰燼に帰した東大寺を再建したのは、俊乗房重源というお坊さんでした。 この時用いた建築様式は、重源さんが中国(宋)から持ち帰ってきた、大仏様(だいぶつよう)と呼ばれる最新のものでした。 最大の特徴の一つに、あえて天…

名プロデューサー、俊乗房・重源!(浄土寺1)

太陽が西に傾き、ほどなく日没を迎えようとする頃、 その空間だけは、まばゆい朝を迎えます。薄暗い浄土堂に、徐々にが光が充ち満ちてきたかと思うと、 金色に輝く、巨大な阿弥陀如来が降臨します。その正体は、鎌倉時代の高僧、俊乗房重源(シュンジョウボウ チョウゲン)が仕掛…

なによりありがたい秘仏

月1度だけ公開、地蔵盆にのみ公開などなど、 なにもそこまでもったいつけなくでいいのではないかと、以前秘仏に関して不満を書いたことがありますが、 不満なんて決して言うことのできない秘仏もあります。先日参拝したお寺は、山奥の小さな村落にありました。 お目…

「カッコいいほとけ」/早川いくを・著 寺西晃・絵【幻冬舎】

カッコいいほとけ ※"ただひたすら、かっこいいほとけを、かっこいい、かっこいいと礼賛するだけの本である"(プロローグより)そうなんです。 邪道といわれようとカッコいいものは仕方がない。一見地味で誰も手に取りそうにない体裁ですが、帯のイラストがすべての内容を物語っ…

謝辞

実をいいますと、このブログは、モバゲーというSNSサイトの日記から転載しているもので、 おかげさまで、前回をもって50回を突破することができました。こんな好き勝手な文章を、表現できる場を与えてもらっていること、 素人の拙筆を、予想以上に多くの人が読んでくださ…

秘仏文化の正体

以前もこの日記で秘仏について書いたことがありましたが(http://d.hatena.ne.jp/Pretty-Puppy/20101020)、先日、60年に一度だけ開かれるといわれる秘仏が、60年を待たずして公開されるということで飛んでいきました。 なんでも、倒壊していたお堂の再建記念だ…

秘仏・大元帥明王、現る!!(秋篠寺)

この日記の第2回で、心のふるさとである秋篠寺のことを書きました。 いつ詣ってもいい感じに閑散として、心が安らぐこのお寺ですが、 今日は事情が違います。開門前から長蛇の列。夏の光に照り映える苔の絨毯を横目に、 40分ほど並んだところでようやく入山できまし…

十一面観音、緊急出動!(渡岸寺観音堂3)

仏像の時間初の、全3回シリーズ。前回の続き。渡岸寺観音堂・十一面観音像。前方に集結した頭上面の先にあるものを、立像の姿から推理します。一般的に、観音立像の立ち方には(1)直立…通常態勢。衆生の声にアンテナを張って、警戒している姿です。 (2)片足の親指を上げる…何か…

頭上面、集結の謎(渡岸寺観音堂2)

前回の続き。精錬された彫刻美が映える、 渡岸寺観音堂の、国宝・十一面観音立像。 この観音像には、仏師のひとかたならぬ、こだわりが見られます。それを考えていくうちに、 この観音様の意外な行動が、浮かび上がってきたのでした。この十一面観音像には、本来あるは…

最強暴悪大笑面(渡岸寺観音堂1)

先日、滋賀県長浜市を旅してきました。 近江地方は、福井県小浜市に並ぶ仏像の宝庫。 この地方の仏像については、色々思うところはあるのですが、 まださほど廻ったわけではないので、あまり無責任なことは書けません。だから今回は、その中の一寺、 「向源寺・渡岸寺観…

法華堂・不空羂索観音宝冠及び化仏(東大寺ミュージアム)

その冠は、高さが88cm、重さ11kg、 緻密に鋳造された銀製の骨組みに、 水晶、翡翠、琥珀、真珠など、1万数千個の宝石が散りばめられています。 さらに製作当時は金箔で覆われていたといいます。 東大寺法華堂の本尊、 身長3.6mの巨大な不空羂索観音像が頭に被っていた宝…

縄文人の遺伝子(東京国立博物館2)

なんと前衛的デザインでしょう。東京国立博物館で縄文時代の実物を初めて見て魅了されました。 エネルギーに満ちた火焔土器のフォルム。 人型を逸した土偶のミステリアスな容姿。縄文時代の文化は、想像をはるかに超えたロマンを秘めています。今回の見仏日記は"像"つながりで、強引に…

トーハク!(東京国立博物館1)

今回は仏像の話ではありません。 天下の「東京国立博物館」、略して"トーハク"に初見参してきました。まあ田舎者なので、トーハクのある上野公園には行ったことがなく、 一歩踏み入るや、なんだこのお祭り騒ぎは、と驚きました。万博のパビリオンかと思って…

夢を背負って(達身寺2)

前回のつづき。達身寺の仏像の主な謎は3つ。(1) 仏像のお腹が妊婦さんのようにポッコリ(達身寺様式)。 (2) 同じ種類の仏像がたくさん。 (3) 未完成の仏像もたくさん。多くの先生が、この謎に挑戦しているものの、なにせ文献が残っていないので、 銘々にいろんな説を唱…

謎とロマンの達身寺(達身寺1)

古代の寺院は、その縁起が不確定なものが多く、 東大寺などの官寺を除いて、ほとんどが後世の史料からの推測に頼らざるを得ないのが実状です。そんな中でも、村人の夢とロマンを秘めた謎の寺が、 先日訪れた、兵庫県丹波市の「達身寺」。 人はこの寺を、"丹波の正倉院"…

「聖(セイント)☆おにいさん」/中村光・著【講談社】

聖☆おにいさん(1) (モーニングKC)今更ですが、筆休め的に超有名なコミック本を。 月刊「モーニング・ツー」で連載中の、 手塚治虫文化賞短編賞受賞作品。 基本、1話完結です。一応、軽くあらすじを。かつて悟りを得て如来となったブッダと、 今も人々の心に無条件の慈悲を与え続け…

強敵、禅宗寺院!(東福寺)

(前回の続き)「仏さまは天国にいるんでも、仏像の中にいるんでもなく、 生まれつき自分の中に持ってるもの。 だから座禅を組み、瞑想し、 自分の中の仏さまを見出して、 そこから悟りの道を開いていく」超簡単にいうと、禅宗(曹洞宗、臨済宗など)の教えはこんな感じだ…

三門の異次元空間!(東福寺/妙心寺)

一筋の光が差し込む薄暗い空間に、 異形の如く浮かび上がる、19体の尊影… 薄明かりに照らし出された虹梁に、 怪鳥、怪魚が躍動し、 見上げた天井には龍が舞い、天女が微笑む。 先日訪れた、京都・妙心寺三門(特別公開)の風景です。妙心寺の三門は、高さ16m、幅12mの、二…