仏像名シーンあれこれ
前回、いくつかの名シーンを抜粋して仏像を紹介しましたが、あといくつかを、経典や書物からご紹介。
原始経典「稀有未曾有経」から、
有名なお釈迦さん誕生シーン。
生まれてすぐ、7歩進んで天と地を指し『天上天下唯我独尊』と叫ぶ。
(東大寺・誕生釈迦仏立像)
「涅槃経」から、
多くの弟子たちが、お釈迦さんのご臨終を悼むシーン。
(法隆寺・釈迦涅槃図)
「毘沙門儀軌」から、
城(古代中国、兜跋国)が、軍賊に襲われたとき、地天女と二匹の鬼に支えられた、巨大な毘沙門天が山から現れて、危機を救ったシーン。
(東寺・兜跋毘沙門天立像)
「陀羅尼集経」から、
文殊菩薩が獅子に乗り、弟子とともに海を渡ってきたシーン。
(安倍文殊院・渡海文殊(五台山文殊))
「無量寿経」から、
宝蔵菩薩(のちの阿弥陀如来)が、五劫(年月の単位。1劫=43億2000万年)という年月を瞑想し、悟りを開いて如来となったときには、髪の毛が恐ろしく伸びまくっていたというシーン。
(五劫院・五劫思惟阿弥陀如来坐像)
「宇治拾遺物語」から、
むかし中国に不思議な力を持った宝誌和尚という高僧さんがいた。あるとき帝が、和尚の肖像画を描かせようと絵師を送ったところ、描くなら正体を見せようぞと、顔が割れて中から十一面観音が現れた、そのシーン。
(西往寺・宝誌和尚立像)
空也(くうや)上人の伝承から、
阿弥陀聖(ひじり)とよばれ、空也上人が念仏を唱えると「南無阿弥陀仏」の6文字が、仏となって口から飛び出したシーン。
(六波羅蜜寺・空也上人立像)
というように、どんなに変わった姿の仏像でも、ほとんどがが何らかの経典や書物に根拠を見いだすことができるのです。
仏像の姿に疑問を感じたら、住職さんや学芸員さんに由来を訊ねてみると、意外に面白いお話が聞けたりしますよ。