十一面サンタの仏像ばなし

大好きな仏像の魅力を、独断と偏見で書き綴ります。

円空スタイル

神戸で円空展」が開催されたので、
喜び勇んで行ってきました。
円空の地元の、岐阜県と愛知県から、一堂に会した36体もの円空仏に囲まれ、とても楽しい気分になりました。
不動明王でさえ微笑んでるんです!

円空は、江戸時代の仏師で、
生涯で12万体以上の仏像を、
各地で彫り続けた、すごい人です。

円空仏は、一目見て分かります。
一本の木でできていて、見た目が"木版画"みたいだったら円空仏です。

背面は手を着けず平らのままのものが多いから、まさに版画版。
キーワードは、とことんまでの簡素化です。
ぜったい未完成やろ、と思えるものがほとんどです。

結構彫り込んでいるものもありますが、
それでも顔以外は荒削り。

実は、彫り込んである作品は、初期のものに多く、
キャリアを重ねるにつれて、作品の簡素化が進みます。

ベテランになったことで手を抜いているように、思われがちですが、
それはとんでもない間違いで、
この人の作品は、逆にだんだんと、
仏像の究極へと近づいていたのでした。

ここからはぼくの私見なんですが、

今回出展されていた、高さ1mの大黒天。

これは、ただの大きな木の根っこに、
顔と手を彫っただけの作品です。

例えば、日常生活の中で、木目が人間の顔に見えたりすることがあるでしょう。
円空は、このただの木の根に、大黒天を見出してるんです。
でも、根っこだけを人に見せて大黒天だと言っても、あまり共感されません。
そこで、チョット顔と手を書き足してあげたところ、もう根っこ全体が大黒天にしか見えなくなります。

また円空は、3〜4cmの観音像を、取り憑かれたように何千体も彫っています。

ここに小さな三角柱の木片があるとします。
この時点で、円空観音菩薩を見出しているんですが、
それでは衆生の共感を得ないので、

三角柱の一角を正面に、
縦に細い線をサッサッと彫って、
顔らしき輪郭と、目鼻口らしき線を、チョンチョンとつけます。

するとちょうど、観音様が衣の下で合掌しているように見えてきます。
今で言うところのデフォルメです。

木材をザックリ割って、そこに仏を見出す。
そして誰もが共感できるように一寸ヒントを足してやる。
それが円空スタイルなのではないでしょうか。

ヨメに言わせると、下手くそだったからそっち方面に進んだんじゃないのと、元も子もないことを…
真相は本人のみぞ知る。