十一面サンタの仏像ばなし

大好きな仏像の魅力を、独断と偏見で書き綴ります。

2012-01-01から1年間の記事一覧

光の芸術家(浄土寺2)

前回の続き。平家の南都焼き討ちで灰燼に帰した東大寺を再建したのは、俊乗房重源というお坊さんでした。 この時用いた建築様式は、重源さんが中国(宋)から持ち帰ってきた、大仏様(だいぶつよう)と呼ばれる最新のものでした。 最大の特徴の一つに、あえて天…

名プロデューサー、俊乗房・重源!(浄土寺1)

太陽が西に傾き、ほどなく日没を迎えようとする頃、 その空間だけは、まばゆい朝を迎えます。薄暗い浄土堂に、徐々にが光が充ち満ちてきたかと思うと、 金色に輝く、巨大な阿弥陀如来が降臨します。その正体は、鎌倉時代の高僧、俊乗房重源(シュンジョウボウ チョウゲン)が仕掛…

なによりありがたい秘仏

月1度だけ公開、地蔵盆にのみ公開などなど、 なにもそこまでもったいつけなくでいいのではないかと、以前秘仏に関して不満を書いたことがありますが、 不満なんて決して言うことのできない秘仏もあります。先日参拝したお寺は、山奥の小さな村落にありました。 お目…

「カッコいいほとけ」/早川いくを・著 寺西晃・絵【幻冬舎】

カッコいいほとけ ※"ただひたすら、かっこいいほとけを、かっこいい、かっこいいと礼賛するだけの本である"(プロローグより)そうなんです。 邪道といわれようとカッコいいものは仕方がない。一見地味で誰も手に取りそうにない体裁ですが、帯のイラストがすべての内容を物語っ…

謝辞

実をいいますと、このブログは、モバゲーというSNSサイトの日記から転載しているもので、 おかげさまで、前回をもって50回を突破することができました。こんな好き勝手な文章を、表現できる場を与えてもらっていること、 素人の拙筆を、予想以上に多くの人が読んでくださ…

秘仏文化の正体

以前もこの日記で秘仏について書いたことがありましたが(http://d.hatena.ne.jp/Pretty-Puppy/20101020)、先日、60年に一度だけ開かれるといわれる秘仏が、60年を待たずして公開されるということで飛んでいきました。 なんでも、倒壊していたお堂の再建記念だ…

秘仏・大元帥明王、現る!!(秋篠寺)

この日記の第2回で、心のふるさとである秋篠寺のことを書きました。 いつ詣ってもいい感じに閑散として、心が安らぐこのお寺ですが、 今日は事情が違います。開門前から長蛇の列。夏の光に照り映える苔の絨毯を横目に、 40分ほど並んだところでようやく入山できまし…

十一面観音、緊急出動!(渡岸寺観音堂3)

仏像の時間初の、全3回シリーズ。前回の続き。渡岸寺観音堂・十一面観音像。前方に集結した頭上面の先にあるものを、立像の姿から推理します。一般的に、観音立像の立ち方には(1)直立…通常態勢。衆生の声にアンテナを張って、警戒している姿です。 (2)片足の親指を上げる…何か…

頭上面、集結の謎(渡岸寺観音堂2)

前回の続き。精錬された彫刻美が映える、 渡岸寺観音堂の、国宝・十一面観音立像。 この観音像には、仏師のひとかたならぬ、こだわりが見られます。それを考えていくうちに、 この観音様の意外な行動が、浮かび上がってきたのでした。この十一面観音像には、本来あるは…

最強暴悪大笑面(渡岸寺観音堂1)

先日、滋賀県長浜市を旅してきました。 近江地方は、福井県小浜市に並ぶ仏像の宝庫。 この地方の仏像については、色々思うところはあるのですが、 まださほど廻ったわけではないので、あまり無責任なことは書けません。だから今回は、その中の一寺、 「向源寺・渡岸寺観…

法華堂・不空羂索観音宝冠及び化仏(東大寺ミュージアム)

その冠は、高さが88cm、重さ11kg、 緻密に鋳造された銀製の骨組みに、 水晶、翡翠、琥珀、真珠など、1万数千個の宝石が散りばめられています。 さらに製作当時は金箔で覆われていたといいます。 東大寺法華堂の本尊、 身長3.6mの巨大な不空羂索観音像が頭に被っていた宝…

縄文人の遺伝子(東京国立博物館2)

なんと前衛的デザインでしょう。東京国立博物館で縄文時代の実物を初めて見て魅了されました。 エネルギーに満ちた火焔土器のフォルム。 人型を逸した土偶のミステリアスな容姿。縄文時代の文化は、想像をはるかに超えたロマンを秘めています。今回の見仏日記は"像"つながりで、強引に…

トーハク!(東京国立博物館1)

今回は仏像の話ではありません。 天下の「東京国立博物館」、略して"トーハク"に初見参してきました。まあ田舎者なので、トーハクのある上野公園には行ったことがなく、 一歩踏み入るや、なんだこのお祭り騒ぎは、と驚きました。万博のパビリオンかと思って…

夢を背負って(達身寺2)

前回のつづき。達身寺の仏像の主な謎は3つ。(1) 仏像のお腹が妊婦さんのようにポッコリ(達身寺様式)。 (2) 同じ種類の仏像がたくさん。 (3) 未完成の仏像もたくさん。多くの先生が、この謎に挑戦しているものの、なにせ文献が残っていないので、 銘々にいろんな説を唱…

謎とロマンの達身寺(達身寺1)

古代の寺院は、その縁起が不確定なものが多く、 東大寺などの官寺を除いて、ほとんどが後世の史料からの推測に頼らざるを得ないのが実状です。そんな中でも、村人の夢とロマンを秘めた謎の寺が、 先日訪れた、兵庫県丹波市の「達身寺」。 人はこの寺を、"丹波の正倉院"…

「聖(セイント)☆おにいさん」/中村光・著【講談社】

聖☆おにいさん(1) (モーニングKC)今更ですが、筆休め的に超有名なコミック本を。 月刊「モーニング・ツー」で連載中の、 手塚治虫文化賞短編賞受賞作品。 基本、1話完結です。一応、軽くあらすじを。かつて悟りを得て如来となったブッダと、 今も人々の心に無条件の慈悲を与え続け…

強敵、禅宗寺院!(東福寺)

(前回の続き)「仏さまは天国にいるんでも、仏像の中にいるんでもなく、 生まれつき自分の中に持ってるもの。 だから座禅を組み、瞑想し、 自分の中の仏さまを見出して、 そこから悟りの道を開いていく」超簡単にいうと、禅宗(曹洞宗、臨済宗など)の教えはこんな感じだ…

三門の異次元空間!(東福寺/妙心寺)

一筋の光が差し込む薄暗い空間に、 異形の如く浮かび上がる、19体の尊影… 薄明かりに照らし出された虹梁に、 怪鳥、怪魚が躍動し、 見上げた天井には龍が舞い、天女が微笑む。 先日訪れた、京都・妙心寺三門(特別公開)の風景です。妙心寺の三門は、高さ16m、幅12mの、二…

円空仏、メタモルフォーゼ!

前回、円空は木材に宿る仏を、少しのヒントを付け足すことにより、 民衆に分かりやすく悟らせたのかも、と書きましたが、仏像に造詣の深い、梅原猛、井上正、両先生方は、未完成の仏像をについて、すごく興味深い説を唱えておられます。奈良時代の天皇は威光を示すために、…

円空スタイル

神戸で「円空展」が開催されたので、 喜び勇んで行ってきました。 円空の地元の、岐阜県と愛知県から、一堂に会した36体もの円空仏に囲まれ、とても楽しい気分になりました。 不動明王でさえ微笑んでるんです!円空は、江戸時代の仏師で、 生涯で12万体以上の仏像を、 …

「仏像の声」/西村公朝・著【新潮文庫】

仏像の声 (新潮文庫)本当にいい入門書です。著者は既に入滅されておられます。 絶版本で、古書店でしか入手できないので、番外とさせていただきました。一見、堅苦しい表紙で、帯の宣伝文句と内容がミスマッチに思われるでしょう? 実際、中身は細かい字でいっぱいです。と…