十一面サンタの仏像ばなし

大好きな仏像の魅力を、独断と偏見で書き綴ります。

三門の異次元空間!(東福寺/妙心寺)

一筋の光が差し込む薄暗い空間に、
異形の如く浮かび上がる、19体の尊影…
薄明かりに照らし出された虹梁に、
怪鳥、怪魚が躍動し、
見上げた天井には龍が舞い、天女が微笑む。

先日訪れた、京都・妙心寺三門(特別公開)の風景です。

妙心寺の三門は、高さ16m、幅12mの、二階建ての大門です。
「三解脱門(略して三門)」
という悟りの世界への入り口とされ、
禅僧たちはこの門をくぐって修業の第一歩を踏み出すわけです。

三門の二階は拝殿になっていて、
観音菩薩を中心に、十六羅漢(釈迦の弟子のトップ16)などがずらりと並び、
周囲には、極楽にいるといわれる鳥や魚、飛龍や天女たちが極彩色で描かれています。

この拝殿は約400年前の建立以来、
年1回の午前中に行われる法要のとき以外は、ほとんど閉ざされているため、彩色が鮮やかに残っているんです。

今回も、入口から差込む光だけが頼りの拝観だったのですが、逆にこれがいい雰囲気。

前日に拝観した、同じ京都の禅寺、東福寺の三門はもっと演出に凝ってて、真っ暗な拝殿を黄色い照明でライトアップしています。
妙心寺とは違った趣の、神々しい世界です。
並んでいる仏像は基本的に妙心寺と同じなんですが、中尊だけは違っていて、釈迦如来像です。

ところがその髪型は、如来のトレードマークの螺髪ではなく、
菩薩のように髪を高く結って、冠を被っています。
これは、「宝冠釈迦如来」といって、菩薩だったゴータマ(お釈迦サンの名前)が、悟りを開いた瞬間の姿です。
真言宗では見ることのない形です。

逆に妙心寺像は、悟りを開く一歩手前の菩薩像が中尊になっています。
観音菩薩の別名である"円通大士"と呼称されています。
円通とは、満ち足りて滞りのないことを意味し、大師は、道心堅固な僧のこと。
より修行僧っぽい名前の方を選んだのかもしれません。

また、台座が蓮の花ではなく、樹木の上であるという、非常に珍しい形。
釈迦が悟りを開いた菩提樹の木を表しているのだそうです。

俗と解脱との境界線である、三門ならではです。

余談ですが、十六羅漢の中で、ひとりだけ、そっぽを向いている像があります。
向かって左から三番目、
お釈迦サンの長男の"ラゴラ(ラフーラ)尊者"です。

実はずっとパパの方を見てるんですね。

東福寺では、真横を見てるんですが、
妙心寺では誰もいない斜め後ろの壁を向いています。

実は、壁の向こうには仏殿(本堂)が建っていて、
ご本尊の釈迦如来像が祀られているのが、その仏殿なんですよ。
まったく、何年経っても親離れのできない息子です。
十六羅漢で大丈夫か?
〜つづく〜