十一面サンタの仏像ばなし

大好きな仏像の魅力を、独断と偏見で書き綴ります。

法華堂・不空羂索観音宝冠及び化仏(東大寺ミュージアム)

その冠は、高さが88cm、重さ11kg、
緻密に鋳造された銀製の骨組みに、
水晶、翡翠琥珀、真珠など、1万数千個の宝石が散りばめられています。
さらに製作当時は金箔で覆われていたといいます。

東大寺法華堂の本尊、
身長3.6mの巨大な不空羂索観音像が頭に被っていた宝冠が、
東大寺ミュージアムで一般公開されています。

宝冠は2年前から、観音像と共に修復作業中で、
昨年から公開されている観音像に遅れること約半年、満を持しての今回のお目見え、しかも今回は単独での展示です。

公開中の観音像は、
その造形技術と存在感で、奈良時代の傑作であることには違いないのですが、
冠や持物をすべて取り外した状態の公開であるため、
それらを完備した姿を期待したファンからすれば、

その見た目の物足りなさは、画竜点睛を欠くどころではありません。

そんな少し残念な観音像の前に、今回の宝冠の登場。
目の当たりにした瞬間、ぼくの中で、宝冠はその持ち主を圧倒しました。

単なるオプションではない、もはや独立した作品である。

そう思った理由としては、
冒頭に書いた宝冠そのものの美術的完成度もさることながら、
実は、この主役は、宝冠そのものではなく、
中央に配された化仏(観音像の頭についている如来のこと)の、阿弥陀如来だったことに気がついたのです。
この阿弥陀如来像は、化仏にしては非常に丁寧に作られていて、
仏像作品としても遜色ありません。

特筆すべきは、如来の後頭部から放たれた後光、つまり、化仏の光背です。
四方八方、一直線に走る放射光背は、如来の身長以上の長さがあり、
宝冠に戦国武将の兜のような猛々しさをも浮かび上がらせます。

放射光は、宝冠の両側面や頂上部からも発せられています。
こうなるともはや、宝冠そのものが阿弥陀如来の光背といえましょう。
不空羂索観音の頭頂にあるのは宝冠ではなく、
掲げた師の尊影から放たれる無数の光だったのです。

本体以上にまばゆい光背を背負った化仏、
今までに見たことがあったでしょうか。

新たな認識による感動、興奮。
ホントに素晴らしい!

さあ、次は御本尊の番です。
この偉大なる宝冠を被り、
自らの光背を背に受けて、6本の腕に持物を構えつつ、
合掌に包んだ水晶に祷りを込める。
万能の力がみなぎる、法華堂・不空羂索観音の完全なる勇姿を、早くぼくたちの前に見せて欲しい!

(※H25年現在は修復の終わった法華堂に、その素晴らしい雄姿を見せてくれています。)
  
東大寺ミュージアム
 開館時間 AM9時半から大仏殿閉門時間*まで(入館は30分前まで)
      大仏殿閉門時間(11月〜2月 PM4時半、3月 PM5時、4月〜9月 PM5時半、10月 PM5時)
 入館料 500円
 駐車場 1000円/日


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