十一面サンタの仏像ばなし

大好きな仏像の魅力を、独断と偏見で書き綴ります。

光の芸術家(浄土寺2)

前回の続き。

平家の南都焼き討ちで灰燼に帰した東大寺を再建したのは、俊乗房重源というお坊さんでした。
この時用いた建築様式は、重源さんが中国(宋)から持ち帰ってきた、大仏様(だいぶつよう)と呼ばれる最新のものでした。
最大の特徴の一つに、あえて天井を張らずに、柱と梁(ハリ)だけで屋根を支えているという建築方法があります。
天井がない分、屋根の高さをいっぱいに使って、仏像をつくることができます。

東大寺で現存する大仏様は、仁王さんのいる南大門のみですが、真下から見上げるとこんな感じ。

約800年間、風雪に耐えてきたのだから、驚異的な耐久性と言えましょう。

この大仏様は、兵庫県小野市の浄土寺本堂にもつかわれているのですが、プロデューサー重源はこれを応用して、驚くべき演出を施しました。

夕日が浄土寺本堂内に差し込むと、あたかも本尊阿弥陀如来が来迎したかのような錯覚を覚えるということは前回述べたところですが、
ただ、いくらまばゆい斜陽光でも、それだけでは、ここまでの来迎シーンを表現することはできなかったと思います。

ポイントは大仏様に組まれた梁にありました。

本堂の屋根を支えるために幾重にも張り巡らされた梁が、見事なまでの放射状を織り成しているではありませんか。
梁自体が、本堂全体をあまねく照らす無量寿光に見立てられているのです。
このことに触れている文献がまだみあたらないので、ぼくの独りよがりかもしれませんが、本尊を正面から拝したときの強烈な第一印象です。

この放射形は、背面の格子窓から差し込む陽の光の効果を何倍にも増幅させることに成功しています。
それだけではなく、堂内を実際よりも広く、そして三尊をより大きく感じさせるとともに、迫り来るような迫力を与えています。

東大寺復興に尽力したことばかりが取り上げられる重源上人ですが、彼は自然と建築を見事に融合させた、光の芸術家でもあったのです。
それだけに、彼が復興させた第二次大仏殿が、またも戦火によって焼失してしまったことが、残念でなりません。

浄土寺
拝観時間 午前9時〜午後0時 午後1時〜午後5寺(10月〜3月は午後4時まで)
拝観料 500円
駐車場 あり


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