「カッコいいほとけ」/早川いくを・著 寺西晃・絵【幻冬舎】
※
"ただひたすら、かっこいいほとけを、かっこいい、かっこいいと礼賛するだけの本である"(プロローグより)
そうなんです。
邪道といわれようとカッコいいものは仕方がない。
一見地味で誰も手に取りそうにない体裁ですが、帯のイラストがすべての内容を物語ってます。
少し前に深海などの珍しいな生物を軽妙な文章と奇妙なイラストで紹介してベストセラーになった、
「へんないきもの」
という本がありましたが、
この筆者が、
次に目を付けたのは仏教でした。
帯の見出しには、
「仏像がもっと楽しめる!」
とあるから、
仏像拝観の指南書だとは思うんですが、
この本には有名な古寺も、運慶の仏像も、一切出てきません。
筆者がただカッコいいと思った仏教キャラをピックアップして、
ケレン味満載のカッコいい文章とカッコいいイラストで、
勢いよく紹介していきます。
見た目や設定のかっこよさだけでチョイスしているので、阿弥陀如来や不動明王など、有名どころだけではなく、
蛤蜊(コウリ)観音や伊舎那天(イシャナテン)、乾闥婆(ケンダツバ)など、
一般にはあまり知られていない仏たちのプロフィールも、面白おかしく、かつドラマチックに紹介されています。
だからといって、見た目だけをネタ的に扱われているかと思えば大間違いで、
本書のすごいところは、
内容がすべて教典や史実に基づいている
ということ。
最古の教典ヴェーダーやインド密教、維摩経に般若心経と多岐にわたって考察されていて、
巻末の参考文献の量を見れば、筆者が執筆にあたって、いかに研究を重ねているかが窺い知れます。
しかも難しい言葉など使うことなく、ポイントだけを端的に、筆者の皮肉や突っ込みを交えながら、一気に読ませる文体。
何より、ただ面白かった〜、で終わることなく、勉強になります。
文字がデカくて読みやすいのもいいですね。
インドの破壊神が、いかにして福の神になったのか、
恐ろしい食人鬼がなぜ日本の神社の守り神になったのか。
当時の仏教事情と、神仏習合の仕組み、仏教との接し方までもが手に取るようにわかる逸品です。
美しくもこわカッコいいイラストも、相変わらずいい仕事をしています。
六道輪廻のコラムには、こんなとぼけた一コマも。
仏教に詳しくない人でも、きっと興味を持てることでしょう。
マンガ感覚で読んでみて。