十一面サンタの仏像ばなし

大好きな仏像の魅力を、独断と偏見で書き綴ります。

「ほとけの履歴書〜奈良の仏像と日本のこころ〜」/籔内佐斗司・著【NHK出版生活人新書】


ほとけの履歴書―奈良の仏像と日本のこころ (生活人新書)


寒すぎて体が動きません。
オコタから一歩たりとも不動明王
どうせなら火炎光背でも背負って暖まりたい。

見仏は春までお預けかなと開き直って、本ばかり読んでます。

さて、この本も入門書なのですが、基本的に違うのは、この本の筆者はプロの彫刻家だということでございます。

それだけではなく、仏像修復のエキスパートで大学教授、国宝級文化財の修復に数多く携わってきた、要するに仏像の専門家。

さらに籔内さんは、昨年いろんな意味で大ブレイクした奈良のキモキャラ
せんとくん
の生みの親でもあるのです。

そんなこともあって本書は、
せんとくんの兄「鹿坊(ロクボウ)」と筆者との掛け合いで進行されるというお遊びもあったりするわけですが、

一番の目玉は、この本が主に
仏像制作の技法
という観点から書かれているということ。

乾漆造りや寄木造りなどの、いまいちピンとこなかったところが、詳しくわかりやすく書かれていて、とても参考になります。

ショッキングだったのが、
「脱活乾漆造り(ダッカツカンシツヅクリ)」の起源について。

脱活乾漆法は、国民的アイドル興福寺の阿修羅像などにみられる奈良時代の製法です。

型を作った粘土の上に漆を塗って、漆が乾いて固まったら中の粘土を取り除いて完成、といったものなのですが、
その起源は一説によると、

死者の身体に、漆を塗って麻布を貼っていたら、
そのうち中の身体が腐ってなくなって、最終的に、漆でできた死者の抜け殻が完成するというもの。
現在のデスマスクのイメージですが、古代中国の道教的遺体処理法だそうです。

さらに本書は、今や伝説となった仏師のことについても記しています。

●仏の本様と謳われ現代にまで受け継がれている仏師、定朝(ジョウチョウ)が確立したシステム、「定朝スタンダート」
●そしてその破壊者運慶の登場
●チーム運慶が残した国宝群の制作秘話

などが、ドラマチックに語られます。

決して堅苦しくなく、初心者にもわかりやすい、また見仏に一層の広がりをもたせてくれる一冊となっております。

せんとくん誕生当初、キモいキャラを作った張本人と、コキ下ろされてた籔内佐斗司先生は、実はすごく偉い人だったんですね。