十一面サンタの仏像ばなし

大好きな仏像の魅力を、独断と偏見で書き綴ります。

「古寺めぐりの仏教常識」/佐伯快勝・著【朱鷺書房】


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筆者は京都の御住職の方です。
つまり、現役のお坊さんが教示する、「正しい見仏の仕方」の本です。

何を以て見仏とするかは、見る者の立場により自由だと思うのですが、
仏像は元来お坊さんのものなのだし、お坊さんが主張する見仏法が、本来見仏のあるべき姿といえましょう。

タイトルが示すとおり、本書は仏像のことだけを書いた本ではありません。
僧侶が示す、古寺めぐりの常識の本です。

ぼくも見仏を半年続けてきましたが、
お寺の求める、礼儀を含む諸々の常識、見仏法など、まだまだ世間知らずだと感じます。

例えば知らなかったのが、拝観料の意味。
お寺が稼ぐために取っているのだと思ってました、
国宝や重文などは、国や自治体からお金がおりているのだとばっかり。

ところが文化財管理の設備、例えば防火対策やなどの費用は、すべてお寺の個人持ちなんだそうです。
文化財保護の協力金として是非とも納めて下さいとのことでした。
まぁそうゆうことなら…とこれから納得して払うことがでします。

これが書かれていたのは、奈良の古寺の住職さんの座談会のコーナーなんですが、

これがまた面白くて、最初は自寺の拝観ポイントなどを語っているのですが、そのうち本音がどんどんこぼれ落ちてきます、

拝観者に対するグチのようなものも出てきますが、マナーの悪い拝観者にあっては、かなり切実な問題があるようです。

そんな中で興味を惹いたのが、ある住職さんがの言葉。

お寺にいるお坊さんは出家僧に見えますが、現実は在家、つまり参拝客と位は同じ、職業が僧侶なだけ。
そう割り切ってます。
だから参拝客の方も近寄りがたいとか思わず、気軽に質問などしてきてください、と。

こんな風に聞くと、お坊さんに親しみが湧いてきますでしょ。

古寺の一般知識も一通り書かれています。

塔の意味、伽藍配置の見方、曼荼羅の読み方。
もちろん仏像のことも。

ぼくが知らなかったのは、

三尊像の脇侍(両端の仏像)は、それぞれが慈悲と智恵を司ってバランスをとっており、中央の本尊はその二つを兼ね備えているのだといいます。

例外もありますが大概そうです。

釈迦に対して普賢と文殊菩薩阿弥陀には観音と勢至菩薩不動明王の矜羯羅と制多迦童子
なるほど。
親分と家来くらいにしか思ってなかった…。

買って良かった一冊でした。