嵐をよぶ大般若経(朝護孫子寺)
奈良の朝護孫子寺へ見仏に行ったところ、今から内陣でご祈祷が始まるというので、それが終わるまで、外陣でじっと待ってました。
そこでぼくが見たものは、読経の概念を覆す、ダイナミックパフォーマンスでした。
大般若祈祷。
大般若経を転読することで、多大な功徳とご加護を得る、有難い祈祷法なのです。
まあ、ただものではありませんでした。
仏像ばなしとは違いますが、記しておかねばなりません。
儀式は複数の僧侶で行われます。
ぼくのいる場所は、御簾などで仕切られていて、
その少しの隙間からは、メイン僧侶の後ろ姿しか見えなかったのが残念。
●最初は般若心経
低音から高音まで、異なる音域の僧侶たちのユニゾンが、心地よく耳に入ってきます。
●次に芳名読上げ
依頼者たちの住所と名前を、次々とリズミカルに、何丁目何番地まで読み上げます。
ご本尊に正確な住所を伝えるためなのですが、
プライバシーとかは、問題ないのかな。
●嵐の転読
果てしない読み上げに、ウトウトしてきたとき、
バーン!と何かを叩きつけるような音。
はっと目を覚ますと、僧侶が蛇腹に折りたたんだ分厚い大般若教典を、両手で頭上高く掲げています。
右手で教典の裏表紙を持ち、リズムを取って、下に落とす要領でバラバラバラと蛇腹のページを開き、
左手で追いかけて閉じる。
一組のトランプを左手から右手へ、華麗に空中を移動させるマジシャンを連想させます。
楽器ならアコーデオンでしょうか。
この一連の作業が「転読」です。
これを分担して600巻やります。
一回のバラバラは、教典を一冊読むのと同じ効果だそうな。
何とも狡い方法…でも大迫力。
それを読経とともに繰り返し、時折、教典を机にバーン!と叩きつけます。「ご本尊、こっちを見よっ」とばかりに。
読経も豪華。数パートに分かれます。
・張りのある声で読み上げるメインヴォーカル。手にはアコーデオン(教典)。
・数人のコーラスが、滑らかな声でロングトーンを奏でます。
・強弱の効いたアップビートを刻むは、祈祷太鼓のベースドラム、
・チャッパと呼ばれる小さなシンバルでアクセント。
・極めつけはバーンッ!
ハードロックさながらの荒々しさに、もうノリノリ。思わず心で拍手です。
1日5回、毎日やるというからすごい。
朝護孫子寺は、ご祈祷がお勧めですよ。
今回はステージをのぞき見る程度でしたが、
いずれは是非、ライヴ料金を払って間近でご祈祷を受けてみたいものです。