「ブッシメン!-THE IMAGE MAKER-」/小野洋一郎・著 【講談社】
ブッシメン!THE IMAGE MAKER(1) (イブニングKC)
2010年11月から『イブニング』という雑誌に連載中の漫画のコミック本です。
仏師、つまり仏像の彫刻師が主人公の珍しい作品。メジャー誌で連載するとは実に思い切ったものです。
第1回目で書いたように、ぼくは仏像をフィギュア感覚で楽しんでいます。
仏像も、偶像という意味で突き詰めていけばフィギュアのひとつ。
なのに、ぼくがフィギュアに、仏像ほどの魅力を見出せないのはなぜなのか。
仏像とフィギュアの違いは何か。
これが、仏像に取り憑かれてから、ずっとぼくを悩ませていた問題のひとつでした。
この漫画は、ぼくにその答えの、なんらかのヒントを提示してくれるかもしれません。
"天才仏師であった亡き父の遺志を受け継ぐ主人公・奈良崎 玄造は、
ふとしたことから無理矢理連れて行かれたイベント会場で、あるフィギュアに目を止めます。
それを皮切りに、彼は意志に反して、
仏像とフィギュアの融合を目指すという、弱小会社のフィギュア制作を手伝うハメに…"
フィギュアを子供の玩具として取り合わなかった主人公が、フィギュア造形に携わっていく中で、
仏像彫刻との共通点を見出し、ヒーローのフィギュアに「心」を吹き込んでいく過程がドラマチックに描かれます。
フィギュアの題材となる劇中アニメ『末法警察ゼン』(マッポウマッポと読みます)の主人公が不動明王の化身であることから、
かけ声が不動の真言(ナウマクサマンダ…)だったり、
三輪身(明王が仏の化身であるという仏教の設定)の説明がわかりやすくネタになっていたり、
その他、いろんな仏教ウンチクが所々に散りばめられていて、それだけでも飽きません。
また、仏像とどう向き合うか、という硬派なストーリーも織り交ぜられ、ふと、自分はどうなんだろうかと考えさせられたりもします。
仏像は好きだけどフィギュアに興味がないという人もニヤニヤしながら楽しめるのではないでしょうか。
仏像をコケにしているようでしていない、心地よい具合のパロディーが展開します。
作者はよほど勉強したか、よほどの仏像マニアかです。
恐らくこの漫画の最終テーマのひとつは、
"仏像の如く、フィギュアは人を救えるか"。
この壮大なテーマに作者はどのような結末を付けるのか。