十一面サンタの仏像ばなし

大好きな仏像の魅力を、独断と偏見で書き綴ります。

ドS観音

頭上に10ないし11の顔を乗せて立つ十一面観音菩薩

その顔の表情はひとつひとつ違うので、すべての御面を拝見することも、十一面観音見仏の醍醐味のひとつといえましょう。

でも、頭のてっぺんという高いところにあるし、小さいし、たいてい薄暗い場所だし…。

そんなこともあり、なかなかじっくりと拝することができないことが多く、
後頭部の顔なんて、光背がくっついてたりなんかして、滅多に見られません。(暴悪大笑面といって大爆笑してる顔です)

ある寺の本尊の十一面観音さまで、金色に輝き、頭の顔もしっかり判別できるものがあって、これは是非とも見ておきたいと思い出向いていきました。

その観音像は、普段は本堂の仏壇の中で、御簾が降りてて見られないものを、特別に御簾を引き上げて公開していました。

その前に数人が集まって、仏像に土下座して頭を下げています。

来る人来る人、漏れなくその前に土下座をします。

そして頭を下げたまま、懇願するように仏像の方に顔を向けるのです。

熱心な檀家の人たちかなと思いながら、ぼくもその前に正座して、観音さまを見上げました。

顔の上半分が、御簾に隠れてよく見えません。

少し頭を下げて、見上げてみると、顔がよく見えた…

ふと気づく。
これか…!

土下座してる!

参拝客に、ひれ伏すことを要求する観音さま。

Sだ。

さらに、少々頭を下げるだけでは、肝心の頭上の10の顔が見えません。

どんどん、どんどん、頭が下がっていき、しまいには、イスラムの礼拝みたいになっていました。

それでも完全には見えません。
今にも五体投地せんばかりのぼく。
満足げに見下ろしている観音さま。

SとMの図式が確立された瞬間です。

その後も、次々と参拝客がやってきては、観音さまにコウベを垂れる。
冷やかしのチャラいカップルまでもが、像の前にひれ伏しています。

なんか、いい気分だなぁ。

ぼくはしばらく、仏像そっちのけで、参拝客を見物しました、という話。