十一面サンタの仏像ばなし

大好きな仏像の魅力を、独断と偏見で書き綴ります。

円空仏、メタモルフォーゼ!

前回、円空は木材に宿る仏を、少しのヒントを付け足すことにより、 民衆に分かりやすく悟らせたのかも、と書きましたが、仏像に造詣の深い、梅原猛、井上正、両先生方は、未完成の仏像をについて、すごく興味深い説を唱えておられます。奈良時代の天皇は威光を示すために、…

円空スタイル

神戸で「円空展」が開催されたので、 喜び勇んで行ってきました。 円空の地元の、岐阜県と愛知県から、一堂に会した36体もの円空仏に囲まれ、とても楽しい気分になりました。 不動明王でさえ微笑んでるんです!円空は、江戸時代の仏師で、 生涯で12万体以上の仏像を、 …

「仏像の声」/西村公朝・著【新潮文庫】

仏像の声 (新潮文庫)本当にいい入門書です。著者は既に入滅されておられます。 絶版本で、古書店でしか入手できないので、番外とさせていただきました。一見、堅苦しい表紙で、帯の宣伝文句と内容がミスマッチに思われるでしょう? 実際、中身は細かい字でいっぱいです。と…

平安セレブ堂 Part2(蓮華王院三十三間堂)

本格的な京都見仏。 予告どおりセレブ寺院を頭に持ってきました。 「蓮華王院」。 通称、「三十三間堂」です。兄の崇徳天皇にして「能もなく芸もなし」、源頼朝にして「日本国第一の大天狗」と酷評させた、天下のダメおやじ、後白河上皇の創建。その場しのぎの当てずっぽう政治の…

阿弥陀仏vsご先祖!

日本の仏壇に祀られる仏像のナンバー1は阿弥陀如来です。そして信心深い人は、毎日仏壇に手を合わせます。でもよく見てると、みんなが手を合わせているのは阿弥陀さんにではなくて、ご先祖さんになんです。 「おはよう、おばあちゃん…」なんて話しかけたりし…

「ブッシメン!-THE IMAGE MAKER-」/小野洋一郎・著 【講談社】

ブッシメン!THE IMAGE MAKER(1) (イブニングKC)2010年11月から『イブニング』という雑誌に連載中の漫画のコミック本です。 仏師、つまり仏像の彫刻師が主人公の珍しい作品。メジャー誌で連載するとは実に思い切ったものです。第1回目で書いたように、ぼくは仏像をフィギ…

ワク!ドキ! 御朱印集め

前回の続き。御朱印は一種のくじ引き的要素を孕んでいます。 手渡されるまで、どんなものが出てくるかの分かりません。文言もデザインも体裁も、チョーカッコイー御朱印は特等、子供が書いた方がまだましなザンネン字でテキトーに書いてるものは末等、もしく…

御朱印の現状

御朱印を知らない人のために、ぼくが好きな東大寺二月堂のものを掲載。 「 観 音 力 」 力がみなぎってきます。 これは「御朱印」といって、通常、神社仏閣で300円払えばもらえます。 「御朱印帳」は、大きなお寺や文房具店、または通販サイトで売ってます。書…

平安セレブ堂(平等院鳳凰堂2)

◉巨額を投じたエンターテイメント大作前回のつづき。東寺もそうでしたが、有力者が贅の限りを尽くした仏像や堂宇。鳳凰堂もそっち系です。 その中でも、このお寺は特にセレブの遊び心が満載です。鳳凰堂はかつて、藤原氏の別荘だったのですが、 別荘をレゴブロック感覚で…

平等院 雑感(平等院鳳凰堂1)

京都・平等院に行ってきました。台風の名残で終日雨模様の日曜日、 休日とはいえ、そんなにお客もいないだろうからゆっくり参拝しようと思っていたのですが、行ってみるとそこそこの混雑具合。 大勢の人たちが、大雨の中、写真を撮っておられます。(ぼくも) 平安寺…

トルソー! トルソー!! トルソー!!!(松尾寺・千手観音残闕)

仏像の魂ここにありと叫びたくなるような、すごい仏像を見ました。奈良・松尾寺の"焼損仏像残闕"(要するに焼け残り) 通称 千手観音トルソー(画像) です。松尾寺のホームページで写真を見て、何だか珍しいものが見られるらしいと、キワモノ感覚で、あまり…

仏教・路線変更の功罪

◉仏教の暴走 現在の商業映画などにも見られる現象ですが、原作者の手を離れた人気作品は、一気にその意図とは違う方向に進んでいきます。原作者の名前で話題性を募り、内容は大衆に迎合させ、他会社との売上げ競争が優先されます。そしてあまりに内容軽視な…

お釈迦様の遺志

◉弟子たちの反乱(?)お釈迦様は生前、偶像崇拝を認めなかったそうです。一見、厳しい戒律か何かに思いますが、よく考えると、その偶像が自分の彫像だったとしたら、それを拝ませるなんて、芸能人か、よほどのナルシストでない限りイヤだと思います。仮に、ぼ…

仏像の見方

◉国宝にしてほしかったら…ある仏像を見に行ったとき、国宝に指定されてもおかしくない貴重な仏像が、重要文化財のままだったので、管理人の方に尋ねたら、 「国宝にしたらガラス張りの中に置かないといけないと聞いたので、断ったんです」 とのこと。 その仏…

「古寺めぐりの仏教常識」/佐伯快勝・著【朱鷺書房】

古寺めぐりの仏教常識(amazonサイトへ)筆者は京都の御住職の方です。 つまり、現役のお坊さんが教示する、「正しい見仏の仕方」の本です。何を以て見仏とするかは、見る者の立場により自由だと思うのですが、 仏像は元来お坊さんのものなのだし、お坊さんが主張…

「ほとけの履歴書〜奈良の仏像と日本のこころ〜」/籔内佐斗司・著【NHK出版生活人新書】

ほとけの履歴書―奈良の仏像と日本のこころ (生活人新書) 寒すぎて体が動きません。 オコタから一歩たりとも不動明王。 どうせなら火炎光背でも背負って暖まりたい。見仏は春までお預けかなと開き直って、本ばかり読んでます。さて、この本も入門書なのですが…

「仏像にインタビュー」/宮澤やすみ・著【実業之日本社】

仏像にインタビュー昨年、NHKの「熱中スタジアム」でも、ちらっと紹介されていたので、ご存じの方もいるかもしれません。コラムニストで仏像好きの宮澤さん、見仏趣味が高じてコミック版解説書を出してしまいました。ぼくが買った当時は、本屋さんの片隅の、梯子に…

「図解・仏像のすべて」/花山勝友・著【光文社知恵の森文庫】

図解 仏像のすべて (光文社文庫)ぼくが見仏道に入ったとき、最初に購入した本で、見仏の基本中の基本が書かれてあるお薦めの入門書です。如来・菩薩・明王・天部の種類、それぞれの意味、特徴、役割、見分け方など、必要最小限の内容が網羅されてます。 ○お地蔵さんはあ…

深みに嵌りすぎて…

ぼくの性格的な問題で、最近、見仏が疎かになってきています。見仏歴が浅いにも関わらず、すぐに本線から脱線してしまうのです。 純粋に仏像だけに浸るということができないみたいでして。まず最初、気になって仕方がなかった、如来、菩薩、明王、天部の違いを調べまし…

東寺雑感(東寺2)

◉完成度の高さゆえ…前回の続き。作家のみうらじゅんさんは、かつて雑誌で、東寺講堂の立体曼荼羅を、仏像好きを判定するリトマス試験紙にたとえて、「初心者の人で、東寺の立体曼荼羅を見てぐっとこないひとは、仏像を好きになれないかも」という旨のことを…

京都デビュー(東寺1)

◉日本一の五重塔奈良の秘仏公開ラッシュが落ち着いてきたので、京都まで足を延ばそうと、五重塔初層が特別公開中の「東寺」を参拝しました。別名、教王護国寺。 仏の力で国を護るためのお寺です。奈良、興福寺の五重塔は、高さ約50m、 日本一高い東寺の塔は…

聖地・奈良

去る11月3日、「平城遷都1300年祭」のメイン会場でのイベントが 来場者数363万人突破という報告を以て終了しました。(祭自体は今年いっぱい続きます) 20年前に開催された「シルクロード博」が680万人を集客したのに比べると少し寂しい感じですが 不景気の…

仏像論・娯楽編

前回は仏教、今回は仏像について。鎧を纏った天部の仏像は もともとインドの神様だったものを仏教の護衛のために連れてきたものだから 造形に遊びの要素が非常に多いんです。先日記した餓鬼もそうですし、例えば画像の天部像、飛鳥寺「深沙大将(じんじゃた…

仏教論・娯楽編

前回、読経ロックのことを書きました。仏教誕生以来、永い年月を経る過程で、 由緒正しく霊験新たかな経典は 観て聴いて、参加して楽しい大衆音楽の要素を得たといえます。今回も、仏像の話から逸れまくり。少し小難しい話をさせてください。 お釈迦さまの悟…

嵐をよぶ大般若経(朝護孫子寺)

奈良の朝護孫子寺へ見仏に行ったところ、今から内陣でご祈祷が始まるというので、それが終わるまで、外陣でじっと待ってました。 そこでぼくが見たものは、読経の概念を覆す、ダイナミックパフォーマンスでした。大般若祈祷。 大般若経を転読することで、多…

邪鬼の本懐

光あるところには影がある。 悪なきところに善はなし。 前回、疑心暗鬼がでたので、強引に邪鬼の話です。 四天王や十二神将など、鎧をまとった仏像を総じて「天部」と呼びます。 そして、彼ら天部の像たち(主に四天王)に踏みつけられて、足下でひしゃげてい…

疑心暗鬼

それにしても、顔が御簾や欄間などに隠れて見えない仏像が多すぎます。もったいつけて秘仏開帳とかいってるから、わざわざ出向いていって拝観料払って、 それで顔が拝めないというのはいかがなものか、と見仏人としては思うのであります。 信者にとっては、…

ドS観音

頭上に10ないし11の顔を乗せて立つ十一面観音菩薩。その顔の表情はひとつひとつ違うので、すべての御面を拝見することも、十一面観音見仏の醍醐味のひとつといえましょう。でも、頭のてっぺんという高いところにあるし、小さいし、たいてい薄暗い場所だし…。…

蔑(さげす)みの仏像

サディスティックな目で諫められたい。 優れた仏像ほど目でものをいいます。優しく包み込むような眼差しや、カミナリオヤジ的仏像もいいですが、 誰にもしかられることなく、みんなからちやほやされて、甘やかされてきた現代人にとって、 たまにはサディスチ…

仏欲

仏像を見たく見たくてしかたがない。このような気持ちを、巷では仏欲(ぶつよく)というそうです。今、ぼくの仏欲は、尽きることがありません。公開日が近づくと、その事ばかり考えて、仕事も手につかないときもしばしば。あぁ、補陀落山でぼくを見守る観音…